契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
釣り合わないのは誰の目から見ても明らかなのだから。

でも和樹をまったく好きではない楓は、なにを言われても平気だった。
 
一方で、嬉しい誤算もあった。経理課の社員たちだけは楓の味方でいてくれたのだ。

『どうしておしえてくれなかったんですか?と言いたいけど、相手が相手だけに気軽には言えないですよね。いろいろ言われると思いますけど、大丈夫です、私たちが守りますから。経理課には楓さんが必要なんですから』
 
亜美はそう言って、しばらくは食堂へも行けない状態だった楓の分のお弁当を買ってきてくれた。

興味本意で楓を見に経理課へやってくる他部署の社員たちを追い返してくれた者もいる。

そうして半年が経ち、楓の会社での生活は以前とほぼ同じに戻りつつある。

なにを言っても平然としている楓に、皆飽きたのか今ではあまり言われることはなくなった。
 
一番心配していた和樹との同居生活も、思っていた以上に順調だった。

結婚を決めたあの日に、彼が見せたあの横暴な顔はあれ以来見ることがなく、紳士的な顔に戻っている。

契約が成立した以上、ふたりはビジネスパートナーのようなもの、それなりに丁寧に接する必要があるということだろう。
 
もっとも顔を合わせて口を聞くこと自体がほとんどない。彼ははじめに言った通り、ほとんど家に帰ってこなかった。
 
なにもなかも、はじめに決めた通りにことが進んでいる。すべて順調なはずなのに……。

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