契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】

「失礼します。お連れさまが到着されました」
　
店員の声が聞こえて、ドアが開き和樹が姿を見せた。

「申し訳ない、待たせたかな」

「いえ、大丈夫です。お疲れさまでした」
　
和樹が、ジャケットを脱ぎハンガーにかけてから向かいの席に座る。一日中働いていたはずなのに、朝見た時と変わらず完璧だった。
　
店員が、飲み物注文を聞いてから下がり、しばらくして料理が運ばれてくる。

業務についてのあたりさわりのない話をしながら、ふたりは食事を取る。

普段口にできないようなアワビや和牛といった高級食材の鉄板焼きは美味しかったが、楽しむ余裕はあまりなかった。

彼の話はいったいなんだろうという疑問が頭の中をぐるぐると回っていたからだ。
　
最後に、店員がコーヒーを運んできて出ていったのを見届けてから、和樹が「さて」と言って楓を見た。
　
楓の胸がドキリとする。いよいよ本題に入るのだ。

「今日で結婚してからちょうど半年になるわけだが、いい機会だからこの契約の振り返りをしておきたいと思ってね」
　
楓は頷いた。

「まず、君の方の感想を聞かせてもらいたい。なにか不満があるなら言ってもらってかまわない。善処しよう」

「特にはなにもありません。両親からはなにも言われなくなりましたし、家も快適です。私は満足しています」
　
とりあえず素直にそう答えた。

「ほかの社員からの反応は？」
　
嫌がらせや陰口についてだ。

「それも、大丈夫です。私は副社長の本当の妻ではありませんので、なにを言われても平気ですし。一貫して無視し続けていたら、もう収まりました」

「そう……」