契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
「結婚して一度は静かになった周りが、以前と同じに戻りつつある」

「……と、言いますと?」

「さすがに見合い話までは持ち込まれない。だが、女性たちからの誘いは……」

再開したということだろう。
 
なるほど、だからこれほど不機嫌なのだ。

「つまり君は妻代行サービスの、契約妻失格だ」

言い放ち、楓を睨む。
 
楓はまたムカッとなった。
 
失格だなんて、失礼すぎるもの言いだ。

「でもそれって私だけのせいですか? 秘書課の暴走は私にはどうすることもできません」
 
彼女たちから逃げ回っていては仕事にならない。
 
言い返すと和樹が眉を上げた。

「だがこのままでは、俺が君と結婚した意味がないのは事実だろう」
 
その言葉にハッとして、楓は口を噤んだ。
 
確かにそうだ。責任の所在はともかくとして、彼が契約の恩恵を受けていないのは事実なのだ。

この契約はお互いにどちらかがやめたいと思ったらいつでもやめられることになっている。

今すぐに解消しようと言われたら楓は応じるしかないのだ。でもそれは楓にとっては、具合の悪いことだった。
 
楓が結婚したことに満足して静かになった両親だが、いくらなんでも半年で離婚したとなれば、大騒ぎするだろう。

場合によっては結婚前よりもひどいことになるかもしれない。

楓の結婚を期に、弟の透の結婚話も本格化してはいるという話だが、まだ正式にはしていない。
 
そもそも、楓自身が今の生活に満足している。

住宅費がかからないどころか通勤も楽ちんで今までにないくらい仕事に集中できている。

寮から出るための部屋探しに時間がかかるため、来年にしようと思っていた資格試験の勉強も前倒しではじめた。

今出ていけと言われたら、部屋探しをするところまで戻ってしまう。

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