契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
そこで資格試験の勉強をしていた。今はテキストとノートが開いたままになっている。
 
和樹がぐるりと部屋を見渡してクローゼットに視線を留める。

無言で歩み寄るとそのまま楓に断りもなくガラリと開けた。

そして中にある物を一瞥してから振り返り、呆れたような声を出した。

「なんだ、半年も経つのにまだ荷物の整理をしてないのか」

「え? してありますよ。ちゃんと片付けてあります」
 
心外だと思い楓は言い返した。クローゼットの中はきちんと整理してある。
 
すると和樹は眉を寄せて怪訝な表情になる。

もう一度、クローゼットの中を確認して「なにもないじゃないか」と呟いた。
 
どうやら中にある物の量から考えて、楓が引っ越してきたまま荷解きすらできていない状態だと勘違いしたようだ。クローゼットに歩み寄り楓は説明をする。

「すべての物がここにちゃんとあります。普段使う服はハンガーにかけてある分で、それ以外の物や冬物は下の衣装ケースに納めてあるんです」
 
プライベートで使うバッグや靴は、箱に入れてしまってある。
 
和樹が啞然とした。

「まさか……。本当に全部でこれだけか?」

「そうですよ」
 
憮然として楓は答える。確かに人より持ち物が少ないという自覚はある。

だからといってべつにミニマリストというわけではなく、ひと通りのものは揃っているのだから、そんなに驚かなくてもいいじゃないか。

「靴は? まさか会社で履いているやつ一足だけじゃないだろうな?」
 
責めるように言われて、楓は答える。

「もう一足、スニーカーを持っています。あまり使わないので、そこの箱に置いてあります」

「もう一足だけ……。アクセサリー類はどこだ?」
 
答えの代わりに、楓は左手の薬指を彼に見せる。彼との結婚指輪が光っている。

結婚したことを周囲に知ってもらうために、常に身につけるよう言われているものだ。
 
和樹が愕然とした。

「まさか……それだけか?」
 
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