契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
素直な言葉が口から出た。
 
着飾ることや無駄な物や持つことにはあまり興味のない楓は、アクセサリーにお金を欲しがる人の気持ちがよくわからなかった。

でもこうして着けてみると、それがよくわかった気がする。
 
後ろで和樹がフッと笑った。そしてスタッフに向かって口を開く。

「これをもらおう。このまま着けて帰れるかな」

「もちろんでございます! 今タグをお切りいたしましょう。お待ちくださいませ」
 
スタッフは声を弾ませてハサミを取りに行く。

それを見送ってから、和樹が鏡越しの楓の耳に囁いた。

「よく似合うよ」
 
……これは、ただの"合格"の合図だ、と楓は自分に言い聞かせる。あるいはただの夫婦のフリか。
 
けれど高鳴る胸と、頬の火照りはなかなか収まらない。
 
優しげにも思える和樹の眼差しを見つめながら、さっき彼に触れられたうなじを、いつまでもこそばゆく感じていた。



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