エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
彼は戸惑いながらも、小さく頷いてくれる。私はお茶碗にご飯をよそう仕草をして「どうぞ」と手渡した。
「いただきます」
彼は両手を合わせた後、チョキにした指を箸に見立てて、見えないご飯を口に運ぶ。
「おいしい?」
「……うん」
「よかった。じゃあ次は、お風呂へどうぞ」
「お風呂? お風呂はどこ?」
「ないけど、入った真似をして」
今思えば、かなりの無茶ぶりだったと思う。しかし男の子はズボンのポケットからハンカチを取り出して頭の上に乗せ、「ふ~、いいお湯だ」と呟いて精一杯私に付き合ってくれた。
「タオルはここよ」
「ありがとう」
「あっ、赤ちゃんが泣いてる!」
「子どももいるのか……」
私はおもちゃ箱から、赤ちゃんのぬいぐるみを引っ張り出す。それから、叔母さんが近所の赤ちゃんを抱っこしていた時の見よう見まねで横抱きにし、ゆらゆら体を揺らした。
子守歌は知らなかったので、幼稚園で習った童謡を口ずさむ。男の子はそんな私をジッと見て小さく笑った。