エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける

「美味しかった。ごちそうさま」
「よかった。じゃあつぎはおふろね」
「お風呂? お風呂はどこ?」
「ないけど、はいったまねするの」

 胡桃は〝そんなこともわからないのか〟と言うようにちょっぴり不満そうな顔。

 自分のままごとルールを相手に押しつけてしまうあの感じ、なんだか懐かしい。

「タオルはここよ」
「ありがとう」
「あっ、くまこちゃんがないてる! パパとおふろはいりたいって」
「了解。……まるでデジャブだな」

 瑛貴さんが、クスクス笑ってくまこちゃんを抱っこする。

 なにがデジャブなのかわからないが、胡桃の相手をする彼は楽しそうだ。

「ふたりとも、ご飯ができたからそろそろ終わりにして」
「はーい!」
「よし、胡桃。お片付けしてママを手伝おう」

 三人で食卓を囲むのも、日常の風景になってきた。

 季節が段々と秋から冬へ近づいてきた今日のメニューは、温かいスープでコトコト煮込んだロールキャベツ。甘いキャベツに包まれたほろほろのひき肉を味わっていると、瑛貴さんが思い出したように言った。

< 151 / 155 >

この作品をシェア

pagetop