エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
初恋の続きは甘く切なく

 街角のお洒落なビルの一階に、その店はあった。真っ白な外壁に黒のシンプルなオーニングがスタイリッシュな印象で、玄関周りに植えられた木々の緑が鮮やかだ。

 彼のエスコートで入店し、個室に案内される。適度に落とされた暖色系の照明が、深い色をしたウォールナットのテーブルをやわらかく照らしている。

「アルコール類は飲める?」

 席に着き、メニューを開いた彼に尋ねられる。

 学生時代は涼帆とも飲みに行ったし、叔父がビールをよく飲む人で時々晩酌に付き合っていたから、お酒にはとくに抵抗がない。彼とふたりきりの空間で話をするのに、景気づけの一杯を飲みたい気持ちもある。

「えっと……それなりに」
「わかった。じゃ、適当に料理に合いそうなものを頼むよ」
「あのっ、ただ、私に払えそうな額のものでお願いします……! お料理も!」

 大企業の社長である彼とはおそらく経済的な価値観が違う。全てお任せしてしまうととんでもない額の会計になりそうで、慌ててお願いする。

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