生まれ変わりの聖女は子供でも最強です!〜死にたがりの元婚約者を立ち直らせたらまた恋が始まりました〜

12.お父様との約束

「リリア!!」

 ふっと目を覚ますと、アレクの声が聞こえた。

 どうやら私の部屋のベッドの上。倒れて担ぎ込まれるのは『リリア』の人生にして二度目だ。

 顔を横にやると、私の手を握りしめ、心配そうに覗き込むアレクの顔があった。

「お父様……」
「リリア! 良かった……!」

 一度目からこんなにすぐに二度目が起こったのだ。父親として娘を心配するのは当然だ。

「リリアをこんな危険な目にあわせるなんて……!」

 お父様は珍しく怒っていた。そして私はハッとする。

「ルーカス様は?!」

 慌てて飛び起きた私に、お父様は優しく頭を撫でて言った。

「ルーカスも無事だよ。リリアが治癒魔法で応急処置をしたんだろう? 良くやった。今、ルーカスを失うわけにはいかないからね」
「良かった……」

 アレクの言葉に私はホッとする。

「でも、これからは無茶をしちゃいけないよ? リリアが命をかけることなんてないんだ」

 リリアにはいつも明るい笑顔を見せるアレクが、少し怒ったような真剣な顔で言った。そして。

「リヴィア様も、自身を犠牲にしてまで国を守る方だった……。リリアは何だか似ているから、私は怖いよ」

 ぎゅうとアレクは私を抱き締めた。

「お父様……」

 私もアレクの身体に手を回し、抱き締めると、彼は少し震えていた。

「ロザリーを失って……リリアまで失ったら耐えられない」

 あ……。

 ロザリーは三年前、二十五歳という若さで亡くなった。病気だった。

 その時のアレクの姿が思い出された。

 本当に仲が良かった両親。アレクはロザリーを愛していて。それは現在進行で。

 忘れ形見である『リリア』を大切に大切に育てて、愛情を注いでくれてきたアレク。

 そんな彼に二度も恐ろしく心配をかけたのだ。

「お父様、心配かけてごめんなさい……」

 私はアレクの騎士服をギュッと握りしめて言った。

「リリア、約束して? もう無茶はしないって」

 私を少し身体から離し、アレクが顔を覗き込み言う。

 アレクに心配はかけられない。でも、『リヴィア』として成せなかったことを『リリア』としてやりたい。それにーー

「お父様、あの時、私は命を削る感覚が無かったので無茶をしました。トロワも大丈夫だと」

 あの時感じたのは、『リヴィア』で感じた命を削る力の使い方とは違った。『リリア』の魔力を消費する感覚で。

「トロワが?」

 アレクがベッドの足元に寝ていたトロワを見た。

「おうよ」

 アレクに「ニャーン」と返事だけすると、トロワはまた寝入った。

 トロワも力を使って眠いらしい。

「本当に?」

 アレクは私の目をじっと見て、問い詰めるように言った。

「本当です! だから、命を削るような無茶はしません。約束します!」

 ……倒れることはあるかもだけど。

 私はアレクに宣言すると同時に、心の中で呟いた。

 でも、リリアは『リヴィア』の時より、強い力を持っている。トロワの力を借りながら、この小さな身体に順応させていけば、きっと出来なかったことも出来るようになるはず!

「私は、出来る力でこの国を守っていきたい。多少の無理はさせてください!」

 私がそう言うと、アレクは、はあ〜と大きく息を吐いた。

「わかったよ。リリア」
「お父様!」

 諦めたように笑うアレクに、私は笑顔になる。

「ただし! 絶対に命をかけることはしないように!」
 
 念を押すようにアレクが言うので、私も元気良く「はい!」と返事をした。

 そんな私を見てアレクは目を細め、優しく頭を撫でた。

「でも、ルーカスにはあまり近付かない方が良いかもね」

 突然のアレクの言葉に私は驚く。

「え、何で?」

 つい『リヴィア』としての素が出てしまったが、アレクは気付いてないようで、続けた。

「あいつは、リヴィア様が命をかけた国を守りたいと思う反面、死にたがっているように見える」

 アレクは遠い目をして話してくれた。

 私はその横顔を見ながら悲しくなった。

「まあ、私の勘だけどね。だからリリアが側いたら巻き込まれるんじゃないかって……」

 アレクは無理やり笑顔を作って言ったけど、ずっとルーカス様の隣りにいる彼が言うのだから、そうなんじゃないかな?

 この国を守るためには、ルーカス様の協力は必須だ。ジェイル様は今、第二王子派に持ち上げられ、周りに言われるがままらしいし。

 うん!まずは、何故か氷のように冷たくなってしまって、しょんぼりしているルーカス様を元気にするのが先のようね!

「だから、『リヴィア』だって言っちまえば早いじゃないか」
「それは、最終手段!」

 寝ていたはずのトロワが、私の思考を勝手に読み取って話したので、思わず声をあげてしまった。

「何が最終手段なんだい?」

 トロワの声が「ニャーン」としか聞こえないアレクが笑顔で聞いてきたので、私は必死に誤魔化した。

「無茶をするのは最終手段だってトロワと話してました〜」
「出来ればそれもやめて欲しいけどね」

 慌てる私に、アレクは苦笑して言った。

 とりあえず、ルーカス様のお見舞いに行こう!

 ルーカス様はこのお屋敷の客間で療養されているらしい。

 そしてアレクが部屋を出た後、私は着替えてルーカス様の部屋に向かった。
< 12 / 52 >

この作品をシェア

pagetop