敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
「どっちなんだね」
クスクス笑いだすふたりの横で、七緒たちは互いに見つめ合った。もちろん愛の語らいではなく〝なんで変えるの〟といった抗議の意味合いだ。
「どっちだったかな、七緒さん。キミと出会った瞬間が眩しすぎて本の記憶が霞んでしまったよ」
聖が歯の浮くようなセリフでさらりと誤魔化す。
デッキで会ったときの強引さはどこへやら、紳士的な様子に戸惑いながら微笑み返した。彼のキラースマイルにドキッとしたものの、気を引きしめなおす。
この場さえ切り抜けられればいい。ほんのひととき恋人ごっこをするだけだから。
「いやしかしよかった。聖ときたら、いつまでもフラフラしているものだから、このまま結婚できないんじゃないかと心配していたんですよ、七緒さん」
「そうですか……」
これだけの容姿をしているうえドクターのアドバンテージがあれば、女性には困らないはず。おそらく引く手あまたで逆に選べないのだろう。もしくは一生独身を謳歌するつもりかもしれない。