敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
ティータイムが終わり、クルーズ船が帰港した。
聖と利幸の後を追い、七緒と孝枝もタラップを下りていく。
傾いた太陽が七緒たちの影を長く伸ばす。ようやく極度の緊張から解き放たれ、残ったのは稀にみる疲労感だった。
「聖、お前は七緒さんを送ってあげたらいい」
「えっ」
利幸の提案に真っ先に声をあげたのは七緒だった。
「私は孝枝さんとこの後、祝杯をあげて帰るから」
ここで演技はおしまいと考えていたため、助けを求める目線を孝枝に投げかける。
しかしふたりを恋人同士と信じて疑わない孝枝が、七緒の視線の意図に気づくはずもない。逆に〝そうしたい〟と思われたようだ。
「そうね、七緒も聖さんともう少し一緒にいたいものね」
「ち、違うの、おばあちゃん」