敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
ほかに思い当たることがないため勝手に悪いほうへ考えていると、ドアの向こうから賑やかな声が聞こえてきた。
「ほら、しゃんとしなさい」
「ごめんなさいってば」
男性と女性だが、どことなく聞き覚えのある声だ。
七緒が耳を澄ませているとドアが開き、聖が入ってきた。白衣姿の彼を見るのははじめてで、その知的な雰囲気にドキッとする。
ところが彼が「お入りください」と案内した人物を見て、違った意味で心臓が飛び跳ねた。
「恵麻ちゃん!?」
つい先ほど会っていた恵麻だった。きっちりと七三に分けたヘアスタイルをした、スーツ姿の年配の男性に腕を掴まれている。
(いったいどういうこと……?)
なにがなんだかわからない。
七緒が目を瞬かせて呆然としていると、年配の男性が唐突に頭を下げた。
「私は山下と申しまして、恵麻の父です」