恋ノ初風
「早いよな。俺らも明日高校生だぞ」
 後ろに手をついた凛が天井を見上げて言う。
「まあね」
 この部屋であぐらをかいても邪魔にならなかったあのときとは違う。今は大きいせいで邪魔で仕方ない!(凛の身長175cm)私の勉強机と凛が座れば一気に圧迫感が増す。
(こころ)覚えてるか?昔一緒にお風呂入ってたって」
「なっ…!?」
 一気に頬が赤めくのがわかる。こういうの、確か古語だと恥ぢ赫くって言うんだっけ。嫌そうじゃなくて。
「覚えてたの?!」
「当たり前だろ。家族以外と家のお風呂入ったの心以外いないんだから」
「…もう。忘れてよそんな恥ずかしい話」
 あの時は気にしなくても当たり前。かな。
「低学年までは一緒だったって、あり得ないよな」
「は?!低学年まで?!」
「お前ほんとに記憶力ないな」
 低学年までって…少なくとも小学校3年生くらいまでは一緒にお風呂に入ってたってことだよね。だってあのときはもう水着の着替えでワーキャー言ってたのに。
「覚えてる方がおかしいよ…」
「だから俺あのときみんなのこと意味わかんなかったぞ。何みてキャーキャー言ってんだよって。普通だと思ってたくらいだからな」
「凛がおかしいだけだから!」
 じゃあ私、何回も男子の裸を…凛の体を目で一周させる。いやいや、想像できない。
「まずここまで一緒にいてもう恥ずかしがることなんてないよ」
 なんだか開き直ってきた。これ私がおかしいよね?恥ずかしいことのほうが普通は多いよね。普通は。
「せめてお前は羞恥心持っとけ。まあ、幼馴染だから仕方ないか。」
「もう13年だもん。寝起き見られてもなんとも思わない」
「昔からひどいからな」
「…わかってるよ」
「明日は早起きだな」
「うるさい。それに寝坊するのは凛の方じゃん」
「おっと失礼」
 凛が頭の後ろをかいた。
「私もうすぐ寝るよ」
「そうだな。明日も早いし。じゃあ明日また家の前で」
「りょーかい。おやすみ」
「おう。おやすみ」
 凛が私の部屋を出ていく。扉が閉まって、凛の部屋に明かりがつくのを確認して私はベッドに転がった。
 なんだかんだいって、凛に助けてもらうことは多くて、いつも頼りになる。愚痴を吐いても聞いてくれるし、いろんな話で盛り上がれる。凛だから話せることもあるくらい。
 昨日開けたままのカーテンから日が射し込む。私はそこで寝落ちしていたことに気づく。
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