狂愛メランコリー

「馬鹿! 何考えてんだ」

 我に返った向坂くんが振り向いた。

 押さえ留めるように、強く私の両肩を掴む。

「今死んだらもう戻れねぇだろ!!」

 はっとした。

 このループは、私が理人に殺されたことで始まった。

 “もう一度やり直したい”という私の願いをきっかけに、それを叶える形で。

 けれど、理人が死んだということは、そのループの体系が崩壊してしまったことを意味する。

 もう……“次”はないんだ────。



「う、あぁ……っ!」

 私は咽び泣いた。

 深い悲しみと罪悪感と絶望の渦に飲み込まれていく。

 最後の最後まで、私を想ってくれた理人。

 これまでの日々と、繰り返す3日間の中で、私は彼に何かを返せただろうか。

『私がずっと、理人のそばにいる』

『……ありがとう』

 ────ごめんね、理人。

 私は一番近くにいても何にも気付かずに、自分の殻に閉じこもってばかりいた。

 ひとりぼっちが怖くて、必死でしがみついて、それなのに最後には自分本位な理由で突き放して。

 甘えきっていた。溺れきっていた。

 そのせいで、深く傷つけた。

 それでも、理人は────。

「……っ」

 私は向坂くんの腕の中で、ただひたすらに泣きじゃくった。

 悔やんで、謝って、後悔して、燃え尽きた心が空っぽになっても、涙はとめどなくあふれてきた。

 向坂くんは何も言わず、私が泣き止むまで黙って背中に手を添えてくれていた……。
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