狂愛メランコリー
それはどうにか“前回”掴むことができた。
胸が締めつけられるような感覚にうつむきながら、小さな声で答える。
「理人は、わたしを好きだって……」
言わば、歪んだ恋愛感情。
それが、理人がどうしてわたしを殺すのか、という問いへの答えだった。
『……だって、ありえないでしょ。僕以外を好きになるなんて』
『え……』
『そんなの、許さない』
あの滾るようで冷酷な瞳を思い返すと、背筋がぞくりと冷える。
わたしの理人への“好き”と、理人のわたしへの“好き”。
その齟齬が、方向性や種類のちがいが、わたしたちの歯車を狂わせたんだ。
理人の中では、わたしはとっくに“幼なじみ”なんかじゃなくなっていた。
「なるほどな。まあ、独占欲が行き過ぎてるあいつのことだし、いまさら驚かねぇけど」
(でも、じゃあ────)
彼の想いに応えれば、殺されずに済むのかな。
だけど、そうしたらわたしの心はどうなるんだろう。
行くあてもなく彷徨った想いを、どこに追いやって理人と接すればいいの?
「どうすればいいのかな……」
「……別に、いいんじゃね」
ふと、向坂くんが投げやりに言った。
よそを向いていた顔を戻してわたしを見下ろす。
「え……」
「それで殺されずに済むなら、付き合えば?」
いままでの彼からは想像もつかないような冷たい言葉と態度だった。
信じられない気持ちで彼を凝視する。
「あいつなら大事にしてくれんだろ。みんな言ってんじゃん、優しい“王子サマ”って」
何よりもまずショックだった。
心の中に落ちたインクが、じわ、と黒い染みを作っていく。
思わず弱々しく立ち上がり、縋るような眼差しを向ける。
「何でそんなこと言うの……? 前は────」
「前なんて俺、知らねぇし」
完全に突き放されて、言葉を失う。
ここまでの話を踏まえても、どうしてそんなことが言えるのだろう。
それ以前に、向坂くんにだけはそんなこと言われたくなかった。