年下男子は天邪鬼
ダメだ。このままでは蟹を食べてただ
食事しただけになってしまう。

私は蟹を食べる手を止めると
改めて安斉さんに向き直った。

「あの、今日ここに来たのは安斎さんにお話があって来たんです。」

「宮城のこと...かな?」

安斎さんは苦々しく笑いながら呟いた。

やはり安斎さんは大地からどこまでかは分からないが
なにか聞いているのだろう...

「はい。宮城さんから何か聞いてますか?」

「うん。なんとなくだけどね...。
依子さんは宮城のこと好き...なのかな?」

苦しそうな表情で問いかける安斎さんに
チクリと胸が痛みながらも私はコクリと頷いた。

「初めは、生意気で嫌な男だなと思ってたんですが
いつの間にか好きになってました。
この年で年下の男の子に入れ込むなんて可笑しいですよね。
案の定、振られちゃいましたし...」

私は自嘲気味に笑いながらも、未だ塞がらない傷口に
鼻の奥がツーンと痛んで急いで鼻をすすった。

だめ...安斎さんの前で泣くわけにはいかない。

しかしそれはすでに手遅れだった。

私の瞳からは溢れ出した涙はいくらブレーキをかけようと
しても止まってはくれない。

私は「すみません」と安斎さんに
謝りながら止めどなく溢れる涙をただひたすら拭った。
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