年下男子は天邪鬼
そして週末、私は安斎さんの誘いを受けて
カニ料理の専門店へと訪れた。

もちろん、こうやって二人で
食事をすることをやめたいという意思を
ハッキリと伝えるためだった。

「ほらっ、依子さん、遠慮せずに沢山食べてくださいね」

しかし、先ほどから私の為に
献身的に蟹の殻を剝いてくれる安斎さんに
なかなか話を切り出せないでいた。

「ありがとうございます」

私はその安斎さんの向いた蟹を
恐縮しながらも黙々と口に運ぶ。

久しぶりに食べる蟹は美味しくて
私の食べる手は止まらない。

私は精神的につらいことがあると
食欲が落ちて瘦せてしまうことはなく
逆に食に走ってしまうタイプなのだ。

お陰でこの一週間で自棄食い自棄酒で
プラス1キロも増加している。

それなのに蟹を食べる手は止まらない。

傍から見ればなんだか家畜に餌をやるご主人のような絵面はとても滑稽だろう。
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