壁にキスはしないでください! 〜忍の恋は甘苦い香りから〜
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目を開くと、桐人と柚が心配そうにこちらを見ていた。
葉名は腕に抱く子を抱きしめなおし、変化した視界にあたりを見渡す。
(今のは一体……)
「葉名、大丈夫ですか?」
柚の声掛けに、葉名はやさしさを体感する。
自然とあがっていく口角に、葉名は自信を身に着けていた。
「はい、大丈夫です」
葉名にとって蒼依は心から愛した人。
そして桐人と柚は、心から尽くしたい人となっていた。
忠誠心をもった葉名は子を抱きしめながら二人に頭を垂れた。
「この葉名、生涯をかけお二方に忠誠を誓うとお約束致します。代々とお二方の魂に寄り添い、お守り致します」
「……許す。頼んだぞ、葉名」
「ぜひ話し相手にもなってくださいね、葉名」
「……っはい!」
――これが四ツ井のはじまり。
そして魂の主として縁を結んだ二人との出会いであった。