Melts in your mouth
こいつ位、素直になれたらどれだけ楽なのだろう。「好き」その二文字を声に出して発する事が、私にとっては高くて分厚い壁に感じてならない。
いくら恋愛とはほぼ無縁な人生を歩んできた私とはいえ、言葉にしないと伝わらないって事くらい、ちゃんと理解している。だからこそ今になって、平野に告白をしなければならないという課題が重くのしかかっているのだ。
胸中と脳内でグルグルと巡るこちらの複雑さを極めている感情と思考など露程にも知らないであろう目前の麗しくも腹立たしい後輩は、頬も口許も緩めっ放しだ。更には目尻までとろりと下げている。
どんな表情をしてもクソイケメンである。お前前世でどれだけの人間の命救ってきたん?百人以上救ってないとこんな容姿で生まれてきた説明がつかん。てか、平凡なこちら側が納得できん。
「ふふっ、俺の手を振り払わないでいてくれるのも、とっても嬉しいです。」
「(クソッ、可愛いって思ってしまう)」
心と腹を決めて、この恋愛感情に向き合わなくちゃいけない。だって、口が裂けても言えねぇけど指先から伝う平野の温もりが心地良いのだから。
だから、私も…今この場でこの男の様に息をするかの如く「好き」とは伝えられないが、ちゃんと近いうちに自分の気持ちを伝えなきゃならない。