おこぼれ聖女と魔眼の騎士


私、このフォレスト薬草店でじいちゃんと暮らせてよかった。
今は心からそう思える。

「じいちゃんこそ、無理しないでね」
「ああ」

カランカランとベルの音がして、重い店のドアが開いた。

「エバ、迎えに来たぞ」
「アランさん」

「頼んだぞ、赤いの」

じいちゃんの皮肉気な言葉に、アランさんは二カッと笑った。

「もちろんです!」

「じゃあ、行ってきまーす」

私は手を振って、フォレスト薬草店を出た。

「行こうか」
「はい!」

店の前の路地は狭いから、大通りに馬車が止まっているんだろう。
第三王子も待っているかなと思ったけど、私とアランさんは手をつないでゆっくりと歩き出した。
並んで歩けるって幸せな気持ちになれるんだ。

「急ぐ必要はないからな」

私の気持ちが伝わったのか、アランさんが指を絡めるようにしてくる。
私は笑ってアランさんの手をキュッと握り返した。

約束したものね、そばにいるって。

「エバ、この旅はなにが起こるかわからないけど……楽しみだな!」
「はい!」

ふたりで顔を見合わせる。
どんな旅になるか見当もつかないけれど、ふたりで力を合わせれば大丈夫。
きっとどんな困難も乗り越えていける気がするの。

さあ、出発しよう!













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