君に届け
「んで?さっきお前先輩に絡んでただろ笑
なんか進展あったのか?」
本格的に朝練が始まり、ペアを組んでの見取り稽古が始まった。
練習中、ニヤニヤしながらそんな不躾なことを聞いてくるのは
さっき、私と先輩の二人の時間に終止符を打ってきた張本人、松尾光輝だ。
「うるさいよ光輝」
「その様子だと、またなんもなかったんだなぁ。
猿の方がもっとマシな恋愛してんだろっ。てか、展開遅すぎ。」
と、きつい一言。
く、くっそぉぉ。
正論すぎてぐうの音も出ない。
「そ、、そんなこと言って。そっちだって何にも進展ないんでしょ!
偉そうなこと言えないじゃん!!」
そう!
実は最近、光輝にも好きな人ができたらしくよく相談されているのだが、正直私の恋よりも進展は遅い。
まぁ、それもそのはず。だって
「あんまり意地悪言うと里にぃに言うから!」
そう、光輝の好きな人というのは私のお兄ちゃんの唐田 里(からた さと)なのだ。
正直、最初に打ち明けられたときは「え、光輝って男の人が好きだったんだ」と驚いたが、幼馴染の光輝なら里にぃのこともよく知っているので反対する気は起こらなかった。
「おまっ、それは反則だろ!」
焦った顔で、必死に弁解してくる姿は素直にかわいいなって思ったり、、笑
なんて話していたら、
「そこ、ちゃんとしろ」
と、弦先輩に怒られてしまった。
「光輝のせいで怒られちゃったじゃん!」
せっかく先輩にはまじめのいい子ちゃんを演じているのに、、最悪だ。
先輩に怒られて拗ねている私に
「、、へぇ、いいじゃん」
光輝が意味深な一言と共に、ニヤァと悪い笑みを浮かべたことは目に入らなかった。
「おっはよー!」
「おはよ」
朝練を終え、教室に向かう。
途中、友達の藤浪 綾(ふじなみ あや)と会ったのであいさつをした。
「今日も先輩かっこよかった?」
「もっちろん!
ていうか聞いて!
ちょっともうほんとにドキドキしたんだけど笑」
綾は私が先輩に特別な感情を抱いていることを知っている数少ない友達だ。
「しょうがないなぁ。聞いてやるか笑」
「やった!」