運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜

一瞬で冷める恋と旅立ち

 ホテルから自宅に帰ったさくらは、スッキリしていた。恋人だと思っていた人に、最悪の形で裏切られどん底だったはずが、怜のお陰で前を向けた。

 もしかしたら、悠太から言い訳か謝罪の連絡があるかと思っていたが、スマホは鳴ることがなかった。だが、ショックではなく正直ホッとした。

 ただ仕事では、直属の上司だ。嫌でも顔を合わせてしまう。昇進して副社長になる悠太はどう考えているのだろうか。

 周りには関係を知られていないのが幸いなのか、社内では悠太の婚約と副社長昇進が話題になるだけだろう。さくらが捨てられたことは、誰にも知られることはない。

 自主退職、異動、解雇。さくらが問題を起こした訳ではないので、解雇はないはずだ。だが、仕事がやりにくくなることには違いない。

 悠太次第で退職出来るように、『退職届』は用意した。

 週明け、さくらはいつも通り出勤する。オフィスビルが見えたところから、心臓がバクバクする。表情に出さないようにポーカーフェイスを心掛ける。

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