運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜

運命の一夜

 パーティー会場から、なんとか気力を振り絞り、平静を装い凛とした足どりで出たさくらは、ホテルの最上階を目指す。

 エレベーターからは、ネオン輝く美しい景色が見える。今のさくらとは正反対のキラキラと輝く世界だ。

 今にも目から涙が溢れそうだが、なんとか堪える。目指すは、このホテルご自慢の夜景スポットにもなっているダイニングバーだ。

 今まで、贅沢もせず頑張ってきた。悠太と交際している間も、私生活では慎ましやかに過ごしてきた。

 今日ぐらい記憶がなくなるまで飲んでも許されるはず。

 案内されたカウンターで、強めのカクテルを頼んだ。飲みながらも、悠太と過ごしてきた日々を思い出してしまう。


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 田崎ホールディングスに入社後、新入社員研修を終えたさくらは総務部に配属となった。本当は、語学力や秘書検定の資格を活かせる秘書課希望だったが、この年は配属の枠がなかった。

 どの部署になっても、精一杯勤めることに変わりはない。真面目に仕事を熟す日々が続いた。

 そして転機は、入社半年が経った頃だった。

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