運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
「あなたには関係ないと思います」
「そうね。ないとは思うけど、私の邪魔はしないでね」
「何を仰ってるかわかりません」

 状況がわからないまま、突然絡まれたのだ。戸惑いしかない。

「帰るわ。お会計してちょうだい」

 亜美の様子を伺っていた連れ達も、普段から振り回され慣れているのか、文句も言わずに帰り支度を始めた。

 さくらは訳がわからなまま、黙って亜美達が店を出ていくまで呆然と見送るしかなかった……。

 常連客しかいなくなった店は、微妙な空気が流れている。

「さくらちゃん大丈夫?」
「何だ?あの女」
「彩姉、塩。塩撒いとけ!」

 みんながさくらを心配する。

「お騒がせしてすみません」
「桂の顔見られなくて良かったわね。どうやら、神楽坂さん目当てでこの地に来たみたい」
「そうなんですか??」
「さくらちゃんの元カレもバカね。あんな女の本質見抜けなかったんだから」
「でもそのお陰で、私は間違わなくて済みましたから助かりました」
「皮肉なものね」
「私は、今が幸せなので」

 亜美の存在がなければ、さくら自身が苦労したかもしれない。

 もしかしたら、悠太は転落の人生を歩むことはなかったかもしれないが……。


 
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