運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜
 一人旅、カップル、新婚さんには理想的な過ごし方ではないだろうか。だが子連れには向かない。

 海外からの客も、それだけを求めるのであれば、沖縄でなくても自国のリゾートに行くだろう。

 年中暖かい沖縄で、新しいことを……。

 アイデアが浮かびそうになった瞬間だった。

「神楽坂先輩〜」

 隣のコテージから、鼻につく甘ったるい声で呼び掛けられた。

 一瞬にして、怒りモードに変わる。

 知り合いでも、たまたま部屋が隣になった状況で、声を掛けるなんてルール違反だ。

 ましてや今回は、完全別での予約で接点がない。しかも関わりたくない相手で、こちらには迷惑な話だ。

「陸斗、中に入る。気分が悪い」
「部屋を替えてもらうよ」

 さすがにこのままでは、休まらないどころか怖い。明らかに怜が目当てで接触してきている。

 陸斗がホテルのフロントに抗議の連絡を入れると、支配人が部屋に飛んできた。

「神楽坂様、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
「どうして、個人情報が漏れているんでしょう?」
「どうやら、辻様を名乗る方から内線が入り、ルームサービスを頼まれまして、こちらのお部屋にお届けで間違いないか、部屋番号をこちらから言ってしまったようです」

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