運命の一夜と愛の結晶〜裏切られた絶望がもたらす奇跡〜

家族に向けての一歩

 お店は、ランチ営業が終わり一息ついた。

「怜さんとええっと……」

 再会してから、自己紹介すらしていないことに今更気づく。

「あっ、申し遅れました。神楽坂で社長秘書をしております辻陸斗です。実は以前、月島さんと何度かお会いしたことがありまして……」
「えっ、すみません。仕事でお会いしてたんですかね?」
「そうですね。お気になさらないで下さい。これからよろしくお願いします」
「こちらこそ。辻さんも、いきなり桂をお願いしてお疲れでしょう。遅くなりましたが、ランチにして下さい」

 カウンターに、先程までお客様に出していたのと同じ、お店で人気のランチプレートを並べる。

 今日のプレートは、メインのチキン南蛮にサラダと切り干し大根とライスが盛られ、味噌汁がついている。男性客はライスを大盛りで頼んでいて、みんな満足そうに帰っていく姿を見ていた。

美味(うま)そうだ……」「ゴクッ」

 料理を前に嬉しそうな怜と、一気に空腹を感じ喉を鳴らす陸斗。二人の視線は料理に釘付けだ。

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