キミの笑顔の裏側は…!?
♡°·第2話·°♡秘密がバレちゃいました

○週明けの学校・教室(昼休み)

いつものように藍を見に来て廊下で騒ぐ女子たち。そして、黄色い歓声をあげる彼女たちに王子様スマイルを向ける藍。

里帆「なにこれデジャヴュ?全く同じ光景を先週も見た気がするんだけど…」

さくら「そうだね…」

サッとさくらは顔を背ける。
先週の一件(第1話)から、藍の顔が真っ直ぐ見られないさくら。


さくら(な、何を今更意識しちゃってんの!?あんなの…いつもの藍の気まぐれ…深い意味はないんだから。落ち着け…アイツは顔がいいだけのゲームオタクだぞ!)

心の中で1人葛藤するさくらは大きく深呼吸をする。

その時、廊下にいた女子たちの一際浮足立つ声が響く。
廊下の向こうから誰かやってきた様子。
不思議に思い、里帆とさくらは女子たちの視線の先を確認する。


里帆「げ。誰かと思えば…遊佐楓(かえで)じゃん。あーあ、うるささ2倍になった」

嫌そうに顔をしかめる里帆。

さくら(遊佐くんって、確か藍に次いでこの学校人気のある人だよね)

遊佐楓(色素の薄い茶色の髪にゆるくパーマをあてている。身長はかなり高く180㌢くらい。女癖が悪いという噂あり)

さくら「遊佐くんって隣のクラスだっけ?」

里帆「そうそう。廊下を通ると女子が火災報知器かってくらいうるさいからすぐにいるのわかるわね…。まぁ、それは笹木にも言えることだけど」

さくら「あはは…まぁまぁ」

毒を吐く里帆をたしなめるさくら。
おもむろに廊下を見つめていた時、通りがかった遊佐楓と偶然視線がからむ。

楓(ニコッ)

瞬間、愛想のいい笑顔をさくら向ける楓。

突然の出来事に驚くさくらをよそにそのまま楓は隣の自分のクラスへと歩みを進めた。

さくら(今、微笑まれた…?いやいや遊佐くんとは話したことないし気の所為だよね?)

内心驚くさくらだが、たまたまだろうと自分の中で納得する。

さくら(女癖悪いっていうのは本当かもね…チャラそうだったし)


○学校・下駄箱(放課後)

1人下駄箱で靴を履き替えるさくら。
今日は里帆に用事があるため1人で帰ることに。
スリッパから革靴に履き替えた時に視線を感じ、そちらに目を向ける。

さくら「誰かと思えば、藍じゃん…!どうしたの?こんな時間まで残ってるの珍しいね」

さくら(いつもは早くゲームしたいからって一目散に帰るくせに…)

珍しい人物の登場に目をパチパチとしばたたかせるさくら。

藍「…別に。たまには俺も遅くなる時くらいある」

素っ気なく言葉を紡ぐ藍は自分の靴箱から革靴を取り出していた。

さくら「ふーん?ま、いいや。じゃあ途中まで一緒に帰る?今日は里帆いないから暇だったんだよね〜」

さくら(この時間帯なら、生徒もいないだろうし。それに藍と私が幼なじみなのはたぶん学校のほぼ全然が知ってるはずだから帰り道が一緒でも変ではない)

ピクッと反応を示す藍。
心なしか機嫌が良さそう。

藍「ま、まぁ…さくらがどうしてもって言うなら…俺は別にいいけど」

さくら「あーはいはい。じゃあ、どうしても藍くんと帰りたいんでお願いしますー。ほら、サッサと行くよ?」

時々ある藍のノリを軽くあしらい1人で先に歩き出すさくら。

藍「ちょっと待てって…!」

その後を慌てて追いかける藍。


○コンビニ・帰宅途中(放課後)

自宅までもう少し。
1番近いコンビニにさしかかったさくらと藍。
藍は不意に足を止め、思い出したようにコンビニを指差す。


藍「あ!ちょっと悪い。少しコンビニ寄りたいんだけど。実はさー新しく出るゲーム情報が載ってる雑誌あるんだけど今日発売日なんだよ…!」

瞳をキラキラさせて語る藍。

さくら「本当にゲーム好きだね〜。まだいつもの格好なんだから、知り合いにバレないようにね」

藍「わかってるって。それにこの辺のコンビニくるうちの高校の生徒なんて俺等くらいじゃん?問題ないって」

ウキウキとした足取りでコンビニに入る藍とその後に続き呆れたような表情を浮かべるさくら。

コンビニの自動ドアをくぐり、すぐさま雑誌コーナーを物色する藍。

さくらは別行動でスイーツコーナーへ向かう。

藍「あった!これこれ!」

お目当ての雑誌を見つけた藍がソッと雑誌に手を伸ばす。

それとほぼ同時に、雑誌に手を伸ばした人物。

藍・楓「「…は?」」

お互いの存在を認識し、小さく声をあげる2人。

さくら「藍、雑誌あったの…って、え?」

スイーツコーナーから雑誌コーナーへやってきたさくらが目を丸くする。

楓「えっと…うちの学校の王子と…和谷…さくらちゃんだよね…?つか、王子これってバリバリゲーム雑誌だけど…王子もゲームとかするんだ」

サーッと血の気が引くさくら。

藍「今時、ゲームくらい誰だってするよ?」

いつもの学校仕様の笑みを浮かべつつ、雑誌から手を離さない藍。
どうやら最後の1冊みたいで譲る気はない様子。

楓「いやいや…この雑誌はゲーム嗜む程度の初心者が読むやつじゃねーよ?つか、俺のほうがさきだったよな?」

藍「俺ってなんでも卒なくこなしちゃうタイプだからさ、嗜む程度だけど結構ゲーム得意なんだ。てか、それはコッチのセリフね?」

バチバチと見えない火花を飛ばす藍と楓。

さくら「ふ、2人ともいい加減にしなよ…てか、藍!いいから譲ってあげたら?雑誌ならまた買えばいいでしょ?」

藍「…は!?んなことできっかよ。今回のオンライゲームの秘密パスコードはこの雑誌にしか…っ!」

楓の存在を忘れ、普段私と話すときと同じ本性を見せる藍。
途中で思い出したのか「しまった」という表情を浮かべている。

楓「…へぇ。王子、相当やり込んでんだね〜。その秘密パスってレベルが一定クラスに到達してないと得られない情報のはずだけど…」

ニンマリと口角を上げ、藍に詰め寄る楓。

藍「…そ、そうなんだ。俺もこのゲーム強い友達に聞いて知ったから…」

楓「友達ねぇ…」

苦しい言い訳に目が泳いでる藍と、訝しげにその様子を見つめる楓。

さくら「それなら藍にはまだ全然使えない雑誌なんじゃない?はい、これは遊佐くんがどうぞ?遊佐くん、ゲーム得意なんだね」

困っている藍に助け舟を出すさくらは、藍の手から雑誌を取り上げて楓に手渡す。

藍「……」

楓「ありがとう。和谷さくらちゃんだよね?そっか、確か王子と幼なじみなんだっけ…?」

さくら「私のこと知ってるんだ?話したことなかったよね??」

楓「かわいい子の情報はバッチリ知ってるんだ、俺」

さくら(うわぁ…チャラい。絶対に里帆が嫌いなタイプだ)

さくら「あはは…ありがとう。それじゃ私達はこれで…。遊佐くんじゃあまた学校でね?」

苦笑い気味にお礼を言うさくらは藍に帰るように促す。

藍「……」

不機嫌そうに楓を軽く睨むと何も言わずにコンビニを出る藍。

さくら(ちょっと変に思われたかもだけど…とりあえず、藍が超がつくほどのゲームオタクであることは隠し通せたかな…?)

藍に続いてその場を立ち去ろうとするさくらの手首をクイッと掴んだ楓は小さく耳打ちする。

楓「うちの王子って超絶ゲーマーなんだね?さっきの言い訳さすがに無理があったし…これって、もしかして学校の皆には秘密なの?」

さくら「…!?」

楓「図星か〜…はは。なるほどね〜面白いこと知っちゃったー」

ケラケラ楽しそうに笑いつつ、雑誌を片手にレジに向かう楓。

そんな楓の後ろ姿を見送り、未だに呆然と立ち尽くすさくら。

さくら(やっかいな人にバレちゃったんじゃ…。藍になんて言う…?)

さくらは小さく肩を落として足早にコンビニをあとにした。

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