【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

第十ニ章 きっと運命だった

どこへ行くと決めたわけじゃなかった。

 どうすればいいのかなんて、私こそ知りたかった。

 ただ、とにかく逃げたかった。

息苦しい家から、あの空気から。

衝動に突き動かされるように外へ出た。

 陽射しは眩しく、空はあまりにも青い。

 昨夜は「もう終わらせよう」と思ったのに、朝になれば「まだ生きたい」と思ってしまう。

 本当は死にたいわけなんてない。消えたくなんかない。

ただ、どこに行けばいいのかわからなかった。

 気づけば足は自然に動いていた。

 大翔の家? 会社? ──違う。

そこはもう、私が行ける場所ではない。

 ふいに胸に浮かんだのは、母と過ごした記憶だった。

幸せだったあの頃へと、足が向かう。

 電車に揺られて一時間。向かった先は、八王子。

 幼い日を過ごした町。

母がまだ生きていた頃の、温かな記憶のある場所。
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