シンデレラは王子様と離婚することになりました。
「克服している人もいます。心に負った大きな傷を、成長の糧にして人生を逞しく生きている人もちゃんといます。

それには、本人の努力はもちろん、支える人の存在が必要です。

簡単なことではありませんよ、その覚悟がありますか?」

「あります。捺美を失うことの方が、俺にとっては辛いことです」

 即答した俺に投げかけられたのは、先生の優しい笑顔だけだった。

 例え俺が覚悟を決めたとしても、捺美が戻ってくるかはわからない。捺美自身が、どう思うかも重要なのだ。

 先生が帰り、高城と二人きりになったが、以前として重い空気が漂っていた。

「社長、なかなか大変な方を好きになってしまったようですね」

「病めるときも健やかなるときも、妻として愛し、敬い、慈しむのが結婚だろ?」

「あはは、そうですね、そうでした」
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