シンデレラは王子様と離婚することになりました。
 はっきりと宣言した私に、お父さんはもうなにも言わなかった。

ひどく動揺している様子で、顔が真っ青になっていた。

「さようなら、お父さん。私はもう、お父さんには会わない」

 私は立ち上がってお父さんに背を向けた。その後ろを寄り添うように大翔が続く。

(言えた……!)

 小刻みに震える足で、社長室を出る。

私はようやく、実家の呪縛から解放された。



 お父さんは高城さんに任せ、私と大翔はタクシーに乗って家に帰った。

車の中でも外でも、大翔はずっと私の手を握っていた。

いわゆる恋人繋ぎで、指先をしっかりと絡め、まるでもう二度と離さないと言外に伝えているようだった。

久しぶりのマンション。もう二度と戻ってこれないと思っていただけに感慨深いものがある。

オートロックドアを開け、広い玄関に入る。

私には不釣り合いだと思っていたこの場所が、私の帰る場所となった。

手を繋いでリビングへと歩く。その間、なぜか二人とも話そうとしなかった。

私は胸がいっぱいで話せなかっただけだけれど、大翔はなぜだろう。

大翔の横顔を見ると、大翔も感極まった顔をしていたので、もしかしたら同じ気持ちなのかもしれない。

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