シンデレラは王子様と離婚することになりました。
暗く静かなリビングに明かりをつける。いつも通り整然としていて、だだっ広い。実家のリビングの倍以上の広さはある。

「捺美がいるだけで、違う家に帰ってきたみたいだ」

 ポツリと大翔が呟いた。

「どう違うの?」

「温かみを感じる。家も捺美が帰ってきて喜んでいるよ」

 そうだったらいいなと思った。同時に、いきなり出て行ってごめんなさいとも思った。

「ただいま」

 部屋全体に向かって声をかけた。ここが、私の帰る場所だ。

 笑顔で家に挨拶をした私を見て、大翔の目がほんのり赤く潤んでいた。

「捺美、おかえり」

 大翔は私をぎゅっと抱きしめた。

腕に力がこもっている。たくさん傷つけたし、たくさん心配をかけさせたのだと思う。

それなのに私を無条件の愛で受け入れてくれる。

 大好きな気持ちが溢れだして、胸がいっぱいになった。

心が震えて、自然と涙が込み上げてきた。

 もう二度と出て行ったりなんかしない。大翔の側を離れない。

「ただいま、大翔」




 【完】

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