【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。
「俺はこっちの寝室にいる。なにかあったら遠慮なく言え」

「は、はい……」

 思っていた以上に紳士的で、優しい態度に意表を突かれる。

きっと女性には不自由してこなかったからこそ、こんなふうに余裕を見せられるのだろう。

「じゃあ、おやすみ」

「……おやすみなさい」

 色男というのは、ため息みたいに自然に甘い笑顔を向けてくるものなのだろうか。

思わず勘違いしてしまいそうになる。

私だけに特別なのかも、なんて。

 ……いやいや。私は勘違いなんてしない。

だって、これは離婚前提の結婚なのだから。

 お風呂の支度を整え、そそくさと浴室へ。

広々としたバスルームは大理石のタイルに囲まれ、高級ホテルそのものの雰囲気だった。

洗濯乾燥機に下着を入れ、スーツはクローゼット型のホームクリーニング機へ。

ハウスキーパーが毎日入っていると言っていた通り、浴室は水滴ひとつなく清潔そのものだった。

 ――どうしてこんなことになったんだろう。

 そう思いながら、私は手早く体を洗いはじめた。

 この選択は正しいのか、それとも間違いなのか。

 不安はある。

けれど――継母や継娘の住むあの家に帰らなくていいと思うと、胸の奥に清々しい風が吹いた。
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