【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

第三章 溺愛のマリッジブルー

正面玄関のロータリーには、昨日と同じ黒塗りの高級車が待っていた。

運転席から降りてきたのは、眼鏡をかけた細身の男性。

昨夜は暗くてよく分からなかったけれど、こうして見ると顔立ちをはっきり確かめられる。

柔らかいウェーブのかかった髪に、体に沿うスリーピーススーツをさらりと着こなしている。

鼻筋の通った整った顔立ちに、常に口元に浮かぶ笑みが加わり、知的で親しみやすい雰囲気を醸し出していた。

だが、眼鏡の奥の視線にはどこか掴みきれない気配がある。

運転手というより秘書、といった印象だ。

「おはようございます」

 朝日を浴びた笑顔は爽やかで、思わず見惚れてしまう。

「朝食をご用意しておきました」

 そう言って男性が差し出した紙袋を、社長が受け取る。

「さすがだな、高城」

「冷蔵庫に何もないのは承知していますから」

 どうやら彼の名は高城さんらしい。

社長とのやりとりは息が合っていて、二人の関係性が垣間見える。
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