【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。
「それだけ疲れていたんだろ。もっと寝ていてもよかったのに」

「いえ……いつもこの時間に起きていますので。家族の朝ご飯の支度とか、色々やることがあったので」

 その言葉に、社長の視線が私に向いた。

「……仕事をしているのに、家族の食事までお前が用意していたのか?」

「学生の頃からですから、もう慣れています」

「遅くまで働いて、朝も家事。……体を壊すぞ」

「大丈夫です! 昨日、私の走りを見たでしょう? 体力と根性には自信があるんです」

 胸を張って言うと、社長はわずかに眉間を寄せた。

「……無理をしすぎだ。お前はいつも、昔から……」

「昔から?」

 小首を傾げた私に、社長ははっとしたように目を逸らす。

「……なんでもない。着替えてくる。家にあるものは勝手に使っていいから。お前はここでゆっくりしていろ」

 そう言い残してリビングを出ていった。

 勝手に使っていいなんて、意外とおおらかな人だ。

もし神経質なタイプだったらと思うと、少し安心する。

 言葉に甘えて、キッチンの棚を一つひとつ開けて確かめていく。

ここで生活していく以上、どこに何があるのか把握しておくのも大切だ。

 そうしていると――ほどなくして、いつものビシッと決めたスーツ姿の社長が戻ってきた。

さっきまでの裸の色気は跡形もなく、冷静で隙のない大企業のトップそのもの。

 そして私たちは、一緒に会社へ向かうことになった。

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