【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。
 胸の奥に込み上げる言葉を必死で飲み込む。

今は何を言っても火に油を注ぐだけだ。

 とにかく――仕事で結果を残さなくては。誰からも文句を言われないくらいに。

 思い浮かんだのは、いつも冷静で完璧な佐伯さんの姿だった。

 視線を向けると、ちょうど目が合う。

慌てたように逸らされ、胸がざわつく。

(佐伯さんは、今朝のことをどう思ったのかな。迷惑だとか、仕事がやりにくくなるとか……。もしかすると、恋愛してる場合じゃないだろって、呆れた目で見られたかもしれない。)

 他の人にどう思われてもいい。

けれど佐伯さんにだけは、認められていたい。

ずっとその思いで頑張ってきたのだから。

失望されたくない――そう願う自分に気づいて、胸がきゅっと締めつけられる。

(余計なこと考えてる場合じゃない。仕事、仕事に打ち込もう)

 気持ちを切り替えてパソコンに集中する。

結婚したといっても、すぐに離婚する契約だ。

ひとりで生きていける力をつけなければ。

「工藤、この前頼んだ集計データ、できているか?」

「はい! すぐに印刷してお持ちします」

 佐伯さんの声に慌てて返事をし、残業して仕上げた資料を印刷する。――やっておいて良かった。

 コピー機へ歩いていくと、廊下の向こうから高城さんが営業一課に向かって来るのが見えた。

胸の奥に、言いようのない不安がよぎる。
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