ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい

12曲目「Kanataの正体」


「色々と迷惑かけてしまうかもしれませんが、精一杯頑張りますのでよろしくお願いします!」

 昼休み、軽音部の皆の前で私は丁寧にお辞儀をした。

「りっかちゃんありがとう~! も~大大大大だーい歓迎だよー!」
「うん、あたしも嬉しい。よろしくね、小野さん」
「よろしく~!」

 妹尾くんも新居さんも植松くんも笑顔で迎えてくれてほっとする。
 と、妹尾くんが「じゃあ早速」と言って昨日見せてくれた分厚いファイルを再び皆の前で広げた。

「学祭で演奏する曲なんだけどさ、全部で3曲の予定なんだけど、1曲はこの間りっかちゃんが歌ってくれたのにしようと思うんだ」
「え、いいの?」
「うん、りっかちゃんの歌声に合ってると思うし」
「嬉しい!」
「それで、あとの2曲なんだけど、」

 新居さんが2つの楽譜を見せてくれた。

「あ、この歌は知ってる! でも、こっちは……」

 知らないタイトルに首を傾げると、新居さんがにっと笑った。

「これは、うちのオリジナル。妹尾が作ったんだよ」
「え! 妹尾くん作曲出来るの!?」

 びっくりして見ると、妹尾くんは照れたように笑った。

「意外でしょ~? 歌詞もこいつ」
「へぇ~」

 ひたすらに感心してしまう。
 まさか妹尾くんにそんな才能があるなんて思わなかった。
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