ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい

「そんなに褒められたら照れるし~」
「ま、歌は絶望的だけどね」

 新居さんの辛辣なツッコミに植松くんもうんうんと頷いて、妹尾くんはムっとした顔をした。

「うるせーし!」

 そんな3人のやりとりを見て、ふふとつい笑みが零れた。

(仲良いんだなぁ)

 そして新居さんが続けた。

「ま、そういうわけで、本番までにこの3曲を練習する感じ」
「わかった。頑張るね!」

 ぐっと両手を握る。

「まぁ、そう肩ひじ張らずに」

 そう言ってくれたのは植松くんだ。

「そうそ、楽しそうに歌ってんのが一番盛り上がるからさ!」
「うん!」

(そうだ。思いっきり楽しもう!)



 あっという間に昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴り、私たちは機材を片づけ教室へと向かっていた。 

「今日は彼、見学に来なかったんだね」
「え」

 隣を歩く新居さんに言われて私はドキリとする。

「昨日一緒に来た、羽倉だっけ? 彼氏なんでしょう?」
「え! あ、うん……」

 瞬間迷ったけれど、新居さんなら言っても大丈夫だろうと私は照れながら頷いた。
 でも、

「彼ってさぁ……」
「?」

 新居さんが私の耳元で囁くように続けた。

「モデルのKanataじゃない?」
「え!?」

 びっくりして、思わず大きな声が出てしまった。
 そのせいで前を歩いていた妹尾くんと植松くんもこちらを振り返った。

「どしたの? りっかちゃん」
「な、何でもないよ!?」

 首を傾げつつもふたりは前に向き直り再び何か話し始めてほっとする。
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