エリート同期は独占欲を隠さない
「悪い。つい」
唇を離し、彼女の様子を伺えば、とろけるような視線と交わった。これだけで力が抜けてしまったのか、一生懸命桐谷の襟もとにしがみついている姿が、身もだえしてしまいそうなくらい可愛い。
「市ヶ谷……」
もう一回、そう言って顔を近づけた時、外から話声が聞こえてきた。ハッとしながら二人でそちらを見やる。
「喧嘩は終わったー?」
買い物に行っていた近藤たちが帰ってきたようだった。未尋は「帰ってきたね」とちょっと惜しそうに微笑み、桐谷から離れる。
だが桐谷は何を思ったのか、扉の方へ急いで向かうと、あがってこようとする二人の前に、立ちはだかった。
「アイス買ってきてやったぞ。食うだろ?」
ビニール袋を掲げ、明智が機嫌よさそうに言う。そんな明智に、桐谷は「あのさ」と申し訳なさそうに切り出した。
「もう少し、二人で話してもいい?」
「え? まぁいいけど大丈夫かよ。何か揉めてんの?」
「ちょっといろいろ」
「わかった。じゃあ、俺、近藤の部屋にいるわ」
「悪いな」
「いい加減素直になれよ」
そう忠告すると、二人は再び出て行ってしまった。