憧れのCEOは一途女子を愛でる
「いい加減、自分の気持ちを伝えろよ。伊地知さんにも、答えを用意しておいてほしいって言っといたぞ」

「マジで?!」

 それはやりすぎだとばかりに朔也が目を見開いて驚いている。
 伊地知さんだって長年俺たちと一緒にいるのだから、朔也の気持ちに気付かないわけがない。
 朔也が三歳の年の差を埋めようとして、先輩の伊地知さんに対して徐々に敬語を使わずに話すようになったことも。

 もしかしたら伊地知さんは、朔也がはっきりと告白してくるのを待っているのかもしれない。
 だとしたら、わかりにくいアプローチでは絶対にダメだ。

「もし答えがノーだったら……伊地知さんはこの会社を辞めるかな?」

 うつむいて頭を抱える朔也に、俺は首を横に振った。

「それはない。あの伊地知さんだぞ?」

 もし告白を断ったとしてもふたりの仲が険悪になることはないだろう。だいたい、俺は朔也がフラれるとは思っていない。

「とにかく全力で行けよ。どうせ告白するなら指輪を用意してプロポーズしてみるのはどうだ?」

「アホか。無理に決まってるだろ。キスもしてない相手にいきなりプロポーズするなんて愚行でしかない」

 俺の言葉に即座に突っ込む朔也がおかしくて、ついアハハと声に出して笑ってしまった。
 だけど本人にとっては笑いごとではないようで、どうしたものかと顔をしかめて考え込んでいる。
 俺としては心を許せる親友と先輩が付き合って、幸せになってほしい……ただそれだけだ。

「俺が言うのもなんだけど、朝陽だってちゃんと行動しなきゃ後悔する羽目になるぞ」

「わかってるよ」

 氷室も香椎さんに気があるらしいと伊地知さんから聞いているし、美しい川のほとりでキスを交わしたとはいえ、悠長に構えてはいられない。

 彼女を逃すわけにはいない。この世でたったひとりの、運命の相手なのだから――――

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