憧れのCEOは一途女子を愛でる
「それよりも、俺は君と氷室の関係のほうが気になってる」

「……え?」

「この前、ロビーの隅で真剣な顔をして話してるのを見た」

 人目につかないようにと気を使って端に寄ったというのに、まさか社長に見られていたとは思わなくて、私は目を丸くして驚いた。

「あれは氷室が告白してたのかもなって、あとで気付いたんだけど……?」

「な、なんでわかったんですか?!」

「氷室の表情。なんとなく腹をくくってた感じがしたから。って、やっぱり告白されたんだ」

 海を眺めながら笑っていたはずの彼の顔がしだいに曇り、どんどんむずかしい表情に変わっていく。
 そのあと急にパッと視線を向けられた私は、ビックリして心臓が止まりそうになった。

「まだ間に合うなら……いや、たとえ間に合わなくても」

 彼が私の両肩に手を置き、熱のこもった瞳で私をじっと見つめた。
 彼の大きな手から力強さを感じ、触れられていると意識するだけで胸が高鳴ってくる。

「俺を選んでほしい」

「あ、あの……」

「君の想像をはるかに超えて、俺は君が好きだ」

 それは私に向けて心から紡いでくれた言葉で、愛の告白だった。
 彼は私のことを真っすぐな人間だと褒めてくれるけれど、彼のほうこそとても誠実で偉大で、(けが)れのない人だと思う。
 うれしくて、ふにゃりとした笑みを浮かべた途端、彼が私の背に腕を回してギュッと抱きしめた。

< 124 / 132 >

この作品をシェア

pagetop