憧れのCEOは一途女子を愛でる
「これ、冴実の綺麗な指に絶対似合うよな。……なにか言ってくれよ」

 ポカンとしたままの私の様子がおかしいのか、彼がフフッと笑いながら私の左手の薬指にその煌めく指輪を嵌めた。

「私、重いしめんどくさいですけど大丈夫ですか?」

「全身全霊で受け止める。心配いらない」

 こんな大きなダイヤモンドなんて私にはもったいない。
 だけどこれは彼が私への気持ちを形にして表してくれたのだと思うと、心にじーんと響いて最高に感動した。

「俺からは逃げられないよ。運命の相手だから」

「逃げませんよ」

 指輪を嵌めた私の左手を取ってうれしそうにしていた彼が、慈愛に満ちた瞳で私と視線を合わせた。
 その瞬間、私の両目からは幸せの涙があふれて頬を伝う。

「せっかく泣き止んでたのにな……」

 彼が親指の腹で私の涙を拭いつつ、困ったように眉尻を下げる。
 今日は泣いてばかりだけれど、今はうれしくて感激しているからで、病院で流したのとは違う種類の涙だ。

「朝陽さん、私と出会ってくれてありがとう。この縁を大事にします」

「なんでそんなにかわいいの」

 あっという間に身体を引き寄せられて唇を奪われる。
 フッと余裕のある笑みを浮かべた彼は、何度も角度を変えてやさしいキスを繰り返した。

「じいさんたちに報告したらふたりとも諸手を挙げてよろこぶだろうな」

 思い返してみると、姿を見るだけでぼうっと惚けたり、目が合うだけで恥ずかしくなって胸が高鳴る男性は、私が今まで出会った人の中で朝陽さんだけだ。
 だから私にとっても彼は特別で、運命の相手なのだと思う。

「指輪、大切にしますね」

「俺も冴実を大切にする。幸せにするって約束するよ」

 もう一度ふわりとキスを交わし、私たちは手を繋いで歩きだした。

 どんな未来が待っているかわからないけれど、ふたりならきっと手を取り合って共に人生を歩んでいけるはずだ。



 ――――END.
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