憧れのCEOは一途女子を愛でる
 なんて素敵な言葉を紡ぐ人なのだろうと、胸がキュンとして仕方がない。思い出として、この感動をずっと忘れずに記憶しておきたい。

「ありがとうございます。……過大評価されてる気がしますけど」

「君はとても真っすぐで、俺にはキラキラして見える」

 うれしくてぼうっとしていたら、不意に彼と視線が交錯した。
 あわてて目を逸らした途端、彼が私の腕に触れ、その行為に驚いてそのまま視線を戻してしまった。

「目を逸らすな」

 腕を引き寄せられて、ふたりの距離がぐっと近くなる。
 それを意識したら、これ以上ないくらいに痛いほど心臓がドキドキと早鐘を打った。

「あの……」

 目力のある瞳で射貫かれる中、蚊の鳴くような小さな声を出した。
 なにも考えられないでいると、ゆっくりと彼の端整な顔が近づいてきて唇と唇が重なった。

 ふわふわした状態で心を奪われて……こんなに幸せなキスは生まれて初めてだ。

 どうしてキスをされたのかはわからない。
 だけど神様がくれたプレゼントだと思って、この幸せを一秒でも長くかみしめていたい。

< 90 / 132 >

この作品をシェア

pagetop