別れが訪れるその日まで

1 鈴代芹の第六感

「芹ちゃんって本当、勘が鋭いよね」

 暑さも和らいできた9月後半。私、鈴代(すずしろ)(せり)が通っている中学校の、5時間目の授業が終わった後の休み時間。
 ゆるふわパーマの女の子、瑞穂(みずほ)ちゃんがそんなことを言ってきた。

「そうかなあ? 別にそんな、鋭くないと思うけど」
「ううん、鋭いって。寧々(ねね)ちゃんもそう思うでしょ?」

 するとその場にいたもう一人の友達。ボーイッシュなショートカットの女の子、寧々ちゃんも大きく頷く。

「もちろん。でなきゃ抜き打ちテストがあるなんて、言い当てられないっしょ」
「だよねー。私数学苦手だから、助かっちゃった」

 二人が言っている通り、私はさっきの数学の時間にテストがあるって、予言していた。

 事前連絡は一切なかったけど、昼休みに二人に言っていたの。
次の数学授業で、テストがある気がするって。

「だいたいテストを予言したのは、これが初めてじゃないじゃない」
「他にもクラス替えで、誰が同じクラスになるかも当ててたっけ。第六感って言うのかな。芹ってば本当に鋭いよ」
「そ、そうかな。そんなことないと思うけど」

 はははと愛想笑いを浮かべながら、心の中で思う。

 本当は、勘なんて全然鋭くない。
 だってもしも本当に第六感なんてものがあるのなら、あの時だって分かっていたはずだもの。

 お姉ちゃんが、死ぬことを。
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