別れが訪れるその日まで

26 紫苑くんの誕生日

 ハイキングにプチ遭難に、告白に姉妹ケンカ。
 振り返ってみれば、たった1日の出来事とは思えないほど、色んな事がありすぎたよ。
 そんな濃厚すぎたあの日から、3日経った月曜日。私は痛みの引いた足で学校に行った。
 紫苑君への、プレゼントを持って。

 今日は紫苑君の誕生日。プレゼントは土日のうちに用意していたけど、どうやって渡そうか。
 紫苑君とはごめんなさいしてからろくに話していないから、なんて声を掛ければ良いのか分からない。
 考えただけでドキドキして、心臓が破裂しちゃいそう。

『こら、今からそんなんでどうするの! 心臓なんてどうなったっていいじゃん。あたしなんて心臓止まってるんだよ』

 どうだと言わんばかりに、胸を張るお姉ちゃん。
 もう、他人事だと思って滅茶苦茶言わないでよー!

 そして今日は、そんなお姉ちゃんの命日でもあるわけで。
 家にお坊さんが来てお経をあげることになっているんだけど、等の本人はそんなの聞いてる場合じゃないって、着いてきちゃった。
 お坊さんごめんなさい。せっかくお経をあげるのに、聞かせる相手はそこにはいません。

 けど、お姉ちゃんが法事を放り出してまで応援に来てくれたんだもの。私も頑張らなくちゃ。
 と、意気込んではみたものの。

 朝が終わって……。
 休み時間が過ぎて……。
 もうすぐ、昼休みも終了間近。なのに、プレゼントを渡すのはおろか。私は紫苑君と、まともに話せてもいなかった。

『ちょっとー、いつまで待たせるのー!』

 そんなこと言われても、渡せるタイミングが無いんだもの。
 そして、急かしてくるのはお姉ちゃんだけじゃない。

「もう、せっかく春田君のこと好きって認めたのに、これじゃあダメじゃない」
「もたもたしてたら、誕生日終わっちゃうよ」

 呆れ顔をしているのは、寧々ちゃんと瑞穂ちゃん。
 二人には、ずっと 前から紫苑君が好きだったこと、今日が彼の誕生日で、プレゼントを用意していることを打ち明けている。
 二人にはこの前のハイキングの時、心配掛けちゃったし、何より友達だから。ちゃんと言っておきたかったの。
 もっとも、打ち明けた時の反応は。

「やっと認める気になったかー」
「バレバレだったもんねー」

 こんなものだった。

 バ、バレバレだったの!? こっちはどんな反応が返ってくるか、身のほど知らずって思われないかって、すごくドキドキしてたのに。私ってそんなに、分かりやすいのかなあ?
 けど応援してもらっているのに、決心したはずなのに、なかなか行動に移せない。

『とにかく、チャンスは必ずあるはずだから、ピッタリマークして。片時も目を離しちゃダメだからね!』

 お姉ちゃん、それじゃあまるでストーカーだよ。あ、でもお姉ちゃんなら姿が見えないのをいいことに本当について周りそうだから、私がしっかり止めないと。

 そうしているうちに、あっという間に放課後。
 紫苑君は先週から入ったと言うバスケ部の練習に、さっさと行っちゃった。

 そして寧々ちゃんと瑞穂ちゃんは今日は用事があるらしく、相談にのってもらえるのもここまでだ。

「ごめんね、力になれなくて。けど、芹ちゃんならきっと上手くいくから」
「明日は良い報告を聞かせてよ!」

 背中を押してくれてから、二人は帰って行く。
 寧々ちゃん、瑞穂ちゃん、ありがとう。こんな私を、応援してくれて。

 まあそんなこんなで、バスケ部の練習が終わるまで待たなくちゃならなくなったから、私は図書室で本を読みながら時間を潰していたんだけど……。

『芹のドジー、読むのに夢中になりすぎてどうするのさー! バスケ部帰っちゃったじゃない!』
「お姉ちゃんだって居眠りしてたでしょ!」

 昇降口で上履きから靴に履き替えて、急いで校舎を出る。
 失敗した。こんな時に本読んだって、頭に入らないだろうなーって思いながら読み始めたけど、いつの間にか没頭していて、気づけば下校時刻。

 慌ててバスケ部が練習してるはずの体育館に行ったけど、そこには数人の生徒が残ってるだけ。聞けば紫苑君は、さっき帰っちゃったそうだ。

 はぁー、こんな時に何やってるんだろう。

『とにかく急ごう! 今ならまだ、間に合うかもしれないよ!』
「う、うん」

 通学鞄と、プレゼントが入った手提げ袋を抱えながら、小走りで昇降口を出る。
 だけど、校門の前まで来た時。

「鈴代さん、ちょっといい?」
「──っ! 石元さん」

 現れたのは石元さんをはじめ、ハイキングの時に絡んできた女子達。
 この前の一件で先生にこっ酷く怒られて懲りたと思ったのに、こんな時になに?

「聞いたんだけど、今日は紫苑君の誕生日なんだって? まさか、プレゼントを渡すつもりじゃないでしょうね」

 バレてる!?
 思わずプレゼントが入った手提げを抱き締めたけど、それを見て確信したのだろう。
 石元さんは敵意むき出しで、眉を吊り上げてきた。
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