Cherry Blossoms〜あなたに想いの花束を〜
一花は桜士の腕の中で胸元を掴みながら涙を零す。そして、声を震わせながら言う。

「私のこの手は、もうとっくに汚れてるんです。本当はここにいちゃいけない!……人を救うはずのこの手で、人を傷付けて命を奪ってしまったこともある。私がいたら、本田先生が後ろ指を指されることになるかもしれないって思って……。私、私は……」

「この手が汚れているのは、俺も同じです。この国を守るために、時に人を騙し、時に人を傷付け、多くの人から奪ってきた。警察官でありながら、後ろ指を指されなくちゃならないのは俺も同じだ」

桜士は一花の涙をそっと指でなぞる。一花は訊ねた。

「私、本田先生のーーーいいえ、九条さんのそばにいてもいいんですか?」

桜士は微笑み、すぐに答える。

「俺は、子月一日先生ーーーいや、一花がいいんだ。そばにいてほしい」

桜士の答えに一花の顔に笑みが浮かぶ。涙を零しながらも花が咲いたような明るい笑顔を見せる彼女に、桜士の胸の中に幸せが溢れてくる。
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