恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました


 だが、事態は急変。彼女の心身を守るため、妻になってもらうと話を押し進めた。

 時に苦しみ、捨て去りたくなる地位も名誉も、里穂子を守るためになるなら喜んで振りかざそうと思えた。

 あんな品位に欠けた言葉を浴びせられる環境に、これ以上彼女を通わせるわけにはいかない。

 ばったり 出会ったエレベーターで、衝動に突き動かされて彼女の腕を取ったときと似た感覚だった。

 それに、しつこい縁談話から逃れたいと思っていたことも本音だ。


「──お久しぶりです、筧です。明日なのですが、羽田から、和歌山の南紀白浜空港までお願いしたいのですが……ええ、午前でお願いしたい」


 電話応対中、雪島が部屋に戻ってくる。

 先ほどの会議の件で報告があるのだろう。通話を終えると「失礼します」とデスクの前に近付いてきた。

< 133 / 272 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop