無気力な彼の甘い初恋。 ※短編

○教室 (放課後)



「圭、今日一緒帰れる?」
「ん、いーよ」

「ありがと。準備してくる。」




ここまではいつも通り。




〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜




「け〜い!一緒帰ろ!」
「ん、わかった」

「わーい!行こっ!」



そんな会話が聞こえてきたかと思うと、圭はお化粧をしっかりとしてスカートを何重にも折った茶髪の女の子と一緒に、私が準備している横をゆっくりと出ていった。










そう。これもいつも通り。





○帰り道









「あんた、今日も圭くんに置いてかれたの?」
「、、そうなんだよね。待っててって言った方がよかったのかな」





「そこ問題じゃないでしょ!
 なんで圭くん綾置いて毎回違う女子と帰ちゃうんだろ。
 、、綾が一緒に帰ろって誘ったらいいよっていうんでしょ?
 なんで待たずに違う女と帰っちゃうんだろ」



圭に置いてかれた私は親友のかんなと一緒に帰路に着く。





「なんかね、前に聞いたときに『え、俺あやと帰ってなかったの?ごめん』って言われっちゃって。
 多分、圭にとって私とあの派手な女の子、見分けついてないんじゃないかな」






そう。私だって初めて圭に置いて行かれたとき、すごく苦しくなって本人に問い詰めたことがあった。
そのときも、めんどくさげに机に突っ伏して目も合わさずにそんなことを言われたのだった。





すごく辛かった。やっぱり私のことなんて好きじゃないんだーって。
でも、だからこそ、好きになってもらおうと努力してるのに、、、結果何も変わっていない。


「はぁ?そんなことある!?」


かんなは驚いているけど


「だって、あの圭だよ?」
「あ、、確かに、、、」





そう、実は圭は私たちの学校で有名な残念イケメンなのだ。





  

顔はかっこいいのだが、遅刻に居眠り、課題も提出しない。
多分頭はいいのだろうけど、毎回何科目かテスト中に寝てしまい赤点&補習の常習犯。
無気力にも程があるだろって思うけど、、



初めて話したときの優しく笑った圭の顔が
忘れられなくて、、一目惚れしちゃったんだよね。

告白して、「いいよ。」って言われたときは死ぬほど嬉しかったけど、、断るのめんどくさかったからとかじゃなかったのかな
とか最近よく考えてる。


もしもそうだったら、私と付き合ってもうすぐ一年になるけどいまだに私の顔を認知していなかったとしても不思議ではない。




「圭は、私と付き合ってることすら覚えてないんじゃないかな」

苦笑まぎれにそんな言葉がついて出た。






「そんなこと、、」



かんなも言葉に詰まってしまったようで、、


「ごめん、こんなこと言われても困るよね」


考え込んでいるかんなに謝ったとき、



「よし!決めた!」

「ん?」


突如かんなが立ち止まり叫ぶ。
びっくりして私も立ち止まった。



「綾、修斗くんと仲良くしてみなよ。それこそカップルみたいな感じでさ。」

「え、修斗と?」

「うん、修斗くんならちょうど良くない?
 お互い恋愛対象なんないだろうし
 いい加減、圭くんにも意識してもらおうよ!
 圭くんに嫉妬してもらおう大作戦!」


「嫉妬!?
 あの圭が?
 まぁ、確かに修斗が相手なら、、」







修斗(しゅうと)というのは、私の従兄弟のことだ。
学校でも、教科書忘れたりした時とかは、お世話になってるけど、それ以外はあんまり話さないから私と修斗が従兄弟だと知っている人は少ないと思う。
あと、修斗は誰に似たのかほんとに文武両道、顔も整ってているのだ。性格は少し難ありだけど笑


、、、正直、圭が私のこと認知しているかも怪しい状況で、こんな作戦意味あるのかなぁ。


「気乗りしない?
 、、、でも、現状変えるためにはちょっとでも意識してもらった方がいいと思う!」



不安に感じて黙っていたら、かんなは覗き込むようにして私の様子を伺ってきた。






、、確かにそうだ。何もしないで、圭の気持ちに任せたまま自分をすり減らしていくよりは何か行動する方が絶対にいい。



「わかった、やってみる!やってみるよ!
 とりあえず、後で修斗にメールします!」

「よし!
 綾がんばれ!マジで応援する!」

「ありがと!かんなと友達でほんとよかった笑」




かんなはいっつも私を助けてくれる。
どれだけ、圭に冷たくされようとかんながいつも話を聞いてくれて、、すごく救われていたのだ。
今回だってそうだ。私のために真剣に考えてくれた。


かんなのためにも今回の作戦絶対に成功させよう!



○家  (就寝前)

夜、修斗に『、、、、なんだけど、協力してほしい🙇』
とメールすると
『何だそれ笑
しょうがねぇな!』

と、了承が取れた。
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