目に視えない私と目が見えない彼

「白8、黄色2、くらいの割合で混ぜてもらえる?」

「……しろ、8、……きいろが、2」

言われた数字を頭の中で何度も唱えながら、パッレットで色をつくる。
美術部でもないし、絵具なんて美術の授業で数回使う程度だった。
コンテストに出す絵画に使うような色を私が作れるとは思えない。パレットの中で生み出された色を見つめながら考えていた。

「……ありがと」

落ち込む私が持つパレットから絵具を筆にとると、キャンバスに描かれた暗闇の世界に、私の作った色で描く。その筆さばきは見とれてしまうほど綺麗で、本当に見えてないのだろうか。と疑問に思ってしまう。

ちらりと、来衣先輩の横顔を見つめると、ドキッと心臓が跳ねた。
…かっこいい。

キャンバスに視線を戻すと、さっきまで暗闇だった世界に一筋のひかりが灯っていた。

「……き、きれい」

お世辞でもなく自然と漏れた。
その世界観に見入ってしまう。

「だろ?」

「す、素敵です。めっちゃ、素敵です!」

興奮して、思わず声も大きくなった。


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