目に視えない私と目が見えない彼
今は早朝。街は静まり返り、鳥のさえずりが聞こえてくる。

家の中で来衣先輩に見つかってしまったら大騒ぎどころではないよね。朝起きたら、学校の後輩が家にいるなんて……誰でも怖い。
ここで、出てくるのを待ってるか。

「誰ですか?」

家の前でひたすら悩んでいるとかわいらしい声が耳に届いた。
驚いて顔を上げると、玄関ドアの前には少女が立っていた。

小学校低学年くらいに見える幼い少女は、目がくりっとしてお人形さんみたいに可愛い。幼いながらに完成された容姿は、どこか来衣先輩の面影を感じる。・・・・・・来衣先輩の妹さんかな?

大きく見開かれた瞳にじっと見つめられていることを感じた。
・・・・・・すごい見てくるな。目が合ってるように感じるけど・・・・・・まさか、視えてる?

そんな、まさかね。
私は人には視えないはず。


「視えてます」

「え、」

「お姉さんさ、もう、生きてないよね?」

「お、お姉さん?姿も視えるの?」

淡々と大人のような口調で話す声の主は目の前の少女だった。
かわいらしい見た目と、生意気な大人びた喋り方が不釣り合いだった。

少女は視えるはずのない私に話しかけてくる。
視線もしっかり私の目を見ていた。


楓さん曰く霊感のある人は、私たちの存在を感じ取ることができると聞いたけど、姿まで視える人がいるなんて。
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