目に視えない私と目が見えない彼
少し遠目から私たちを凝視している杏子ちゃんは、私の目の前まで来るとゆっくり口を開いた。

「杏子、まだ全部は信じられなかったけどお兄ちゃんの様子を見たら、信じることにした……昨日帰ってきて元気なかったのは未蘭さんのせいってわかったから」

息を吐きながら零すその言葉は大人さながらだった。

「未蘭さん、学校終わったらうちにきて。
…学校では、まあ、自分で頑張ってよ」

「う、うん」

「なんだよ?杏子と未蘭って、初めましてだよな?」

「お兄ちゃん、杏子、未蘭さんと友達になったの。遊びたいから、学校終わったら一緒に帰ってきてね?」

杏子ちゃんの手を引っ張り来衣先輩に聞こえない位置に移動した。彼に聞こえないように小声で問いかける。


「杏子ちゃん、友達って?あの言い方だと……来衣先輩、誤解しちゃわないかな?」

「未蘭さんが生きてるって?」

その言葉はグサリと刺さった。
そう、私は死んでるのだ。
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